複数の上司を持つ場合の優先順位づけと板挟み解消法

2024年3月27日

複数の上司を持つ場合の優先順位づけと板挟み解消法

今日のビジネス環境では、一人の上司だけからの指示で業務を進めることが難しくなってきています。プロジェクトごとに異なるリーダーがいたり、マトリックス組織で複数の上司から指示を受けたりすることも珍しくありません。あなたも「AさんとBさんから違う指示をもらって困った…」という経験はありませんか？

この記事では、複数の上司からの指示に振り回されることなく、効率よく仕事を進めるためのコツをご紹介します。板挟みのストレスから解放されて、スムーズに業務を進めていきましょう！

複数の上司から指示を受ける現代のビジネス環境とその課題

かつての日本企業では「一人の部下に一人の上司」という単純な構図が一般的でした。しかし現在では、業務の効率化や柔軟性を高めるために、マトリックス組織やクロスファンクショナルチームの導入が増えています。これにより、多くの人が複数の上司から指示を受ける状況に直面しているのです。

マトリックス組織とクロスファンクショナルチームの増加

マトリックス組織では、従業員は機能別（営業、マーケティング、開発など）の上司と、製品やプロジェクト別の上司という複数のラインに属することになります。また、クロスファンクショナルチームでは、異なる部署から集まったメンバーが一つのプロジェクトに取り組みます。

一般社団法人日本能率協会の調査によると、日本企業の約65%が何らかの形でマトリックス型の組織構造を採用しており、その数は年々増加傾向にあります。特に大企業やグローバル企業では、この傾向がより顕著です。

複数上司からの相反する指示で生じるストレスと困惑

複数の上司から指示を受けることの最大の問題は、「相反する指示」が発生するケースです。例えば：

機能別上司が「品質を最優先に」と言う一方で、プロジェクト上司が「納期厳守」を強調する
部門長が「コスト削減を」と指示する一方、プロジェクトマネージャーが「最高品質の素材を」と要求する
直属の上司が「既存顧客のフォローを」と言う一方、営業統括が「新規開拓に注力を」と指示する

実態調査：働く人の7割が複数上司の板挟みを経験

人材サービス会社のランスタッドが実施した2023年の調査によると、日本の会社員の約72%が「複数の上司から矛盾する指示を受けて困った経験がある」と回答しています。この数字は5年前の調査と比較して約15%も増加しており、働き方の多様化とともに板挟み問題が深刻化していることがわかります。

板挟み状態が引き起こす業務効率の低下とメンタルへの影響

複数の上司からの相反する指示は、単に業務の混乱を招くだけではありません。調査によれば、板挟み状態が続くことで以下のような深刻な影響が生じることがわかっています：

影響	発生率	主な症状
業務効率の低下	85%	優先順位の混乱、作業の手戻り、意思決定の遅延
ストレスの増加	78%	不安感、睡眠障害、集中力低下
モチベーション低下	65%	仕事への意欲減退、創造性の低下
人間関係の悪化	59%	上司や同僚との関係悪化、チーム内の信頼低下

あなたも「どの指示を優先すべきか」で悩んだり、「どちらの上司にも嫌われたくない」というプレッシャーを感じたことはありませんか？次の章では、そんな状況を改善するための具体的な方法をご紹介します。

複数上司からの指示に対する効果的な優先順位づけの方法

複数の上司から矛盾する指示を受けた場合、まず必要なのは「優先順位づけ」です。すべての指示を同時に満たすことは難しいので、何を先に、何をどの程度重視するかを判断する必要があります。では、その判断基準をどう設定すればよいのでしょうか？

緊急度と重要度のマトリックスを活用した判断基準

優先順位づけの基本として、「アイゼンハワーのマトリックス」と呼ばれる考え方があります。これは、タスクを「緊急度」と「重要度」という2つの軸で分類するものです。

アイゼンハワーマトリックスの4分類

緊急かつ重要：すぐに自分で取り組むべきタスク
重要だが緊急ではない：計画的に取り組むべきタスク
緊急だが重要ではない：可能であれば委任するタスク
緊急でも重要でもない：削減・排除を検討するタスク

複数の上司からの指示を受けた場合、まずこのマトリックスに当てはめてみましょう。例えば、「来週のプレゼン資料作成（重要だが緊急ではない）」よりも「今日中に必要なクライアントへの回答（緊急かつ重要）」の方が優先度が高いと判断できます。

会社全体の目標と照らし合わせる視点の重要性

もう一つの重要な判断基準は、「会社やチームの全体目標」との整合性です。複数の指示の中で、会社の方針や目標達成により貢献するものを優先することで、より戦略的な判断が可能になります。

例えば、会社が今期「顧客満足度向上」を重点目標としている場合、品質向上に関する指示は納期短縮よりも優先されるかもしれません。逆に「市場シェア拡大」が目標なら、新規顧客開拓に関する指示が優先される可能性があります。

優先順位づけに役立つ3つの質問フレームワーク

判断に迷った場合は、次の3つの質問を自分に問いかけてみましょう：

インパクト質問：「この作業を完了させることで、最も大きな成果が得られるのはどれか？」
リスク質問：「この作業を後回しにした場合、最も大きなリスクが生じるのはどれか？」
リソース質問：「限られた時間とリソースで、最も効率よく進められるのはどれか？」

これらの質問に答えることで、より合理的な優先順位づけが可能になります。

デジタルツールを活用したタスク管理の実践例

現代のビジネスパーソンには、優先順位づけを助けるさまざまなデジタルツールが利用可能です。例えば：

TrelloやAsana：視覚的にタスクを管理し、期限や優先度を設定
Microsoft To Do：簡単に「重要マーク」を付けて優先タスクを管理
Notion：複数プロジェクトを横断的に管理し、関連性を可視化

これらのツールを活用することで、複数の上司から受けた指示を一元管理し、「見える化」することができます。優先順位が明確になれば、「どの作業に今取り組むべきか」の判断がしやすくなります。

あなたはどのような基準で優先順位をつけていますか？会社の目標を意識していますか？次の章では、優先順位がついたあとの「板挟み解消」のためのコミュニケーション方法をご紹介します。

板挟み状態を解消するためのコミュニケーション戦略

優先順位をつけたとしても、最終的に「どちらかの上司の指示を後回しにする」という決断が必要になることがあります。そんなとき、上司との適切なコミュニケーションが板挟み状態を解消する鍵となります。

透明性を保ちながら上司間の調整を促す対話術

板挟み状態の最大の問題点は、「上司同士がお互いの指示内容を知らないこと」にあります。そのため、透明性のあるコミュニケーションが重要です。

効果的な対話のステップ

状況の明確化：「Aさんからは〇〇の指示を、Bさんからは△△の指示をいただいています」
課題の提示：「両方とも重要な業務ですが、時間的制約があり困っています」
解決案の提案：「まず〇〇に取り組み、その後△△に着手したいと考えていますが、いかがでしょうか？」

このように、単に「困っている」と伝えるだけでなく、具体的な解決案を提示することで建設的な対話が可能になります。

自分の立場と課題を明確に伝えるアサーティブな表現法

日本人は特に「NO」と言うことを避ける傾向がありますが、板挟み状況では適切に自分の状況を伝えることが重要です。アサーティブ（自己主張的）なコミュニケーションを心がけましょう。

Young asian businesswoman suffering stress working at office.

アサーティブな表現の3つのポイント

「私は〜」で始める：「私はどちらの業務も大切だと考えていますが、同時進行は難しい状況です」
具体的な事実を述べる：「現在、週報作成に3時間、クライアント対応に4時間を要しています」
感情を交えない：感情的にならず、事実と要望を冷静に伝える

特に重要なのは、自分の能力不足やネガティブな感情を強調しないことです。「どちらもできなくて申し訳ありません」ではなく、「限られたリソースでどう最適化するか」という視点で話しましょう。

上司同士の橋渡し役になるためのミーティング設定術

場合によっては、複数の上司が同席するミーティングを設定することが最も効果的な解決策となります。以下のポイントを押さえましょう：

目的を明確にする：「各プロジェクトの優先順位を確認するため」など
議題を事前共有：論点を明確にし、感情的な対立を避ける
中立的な立場を保つ：どちらかの上司に肩入れした印象を与えない
記録を取る：決定事項を文書化し、後日の混乱を防ぐ

ミーティング招集メールの例文

件名：プロジェクトA・Bの優先順位確認ミーティングのお願い

○○部長、△△課長

お世話になっております。田中です。
現在、部長からご指示いただいているプロジェクトAと、課長からご指示いただいているプロジェクトBが同時進行しており、リソース配分について相談させていただきたく、15分程度のお時間をいただけないでしょうか。

候補日時：
・3/15(月) 15:00〜
・3/16(火) 10:00〜
・3/16(火) 16:00〜

ご多忙中恐れ入りますが、ご検討のほどよろしくお願いいたします。